2011/12/28

2011年。平成23年。締めの言葉。です。





 「あと何日かで、今年も終わるけど」

 みなさんにとっての、2011年はどのような年だったのでしょうか?

 僕にとっては、普通の年でした。

 こんな言い方はちょっとおかしいかも知れないけど、すみません。僕、捻くれ者なので。本当は、沢山、色々ありすぎるくらいの出来事がありました。だから、例年よりも特別な年であったのは事実です。でも、この、2011年という年を特別な年に敢えてしたくないからして。普通の年でした、と、言ってみました。

 特別な年ってない!と思ったりする人間なのです。だって、一日たりとも同じ日はやってこないから。世の中や、身の回りで起きた出来事を、何かの計りで比較して、大小で区別することは可能だけど、その重みや軽さは誰にも決められない。決めるのは自分だから。それに、2011年を特別な年だと言い切ってしまうと、過去や未来が薄れてしまいそうなのです。来年は、今年より特別じゃないような気持ちになっちゃうし、過去の年があまり重要じゃなくなっちゃう気もする。だから、普通だったと、言ってみるのです。でも、その、普通には、沢山のことが詰め込まれています。

 今更言うまでも無く、今年は、東日本大震災がありました。その前後では、直接的にも間接的にも、僕の目の前に広がる景色は一変しました。突然の天変地異。これに飲み込まれる非力な人間。その後繰り広げられる、原発の安全性の是非。これに掻き乱されて真実を未だ掴めないままにいる人間。天災と人災。それがないまぜになって、まだまだ震災の影響は続いています。来年だけではなく、来年以降、ずっと、ずっと、ずっっっっっと、続いていきます。それが巻き起こった年が、2011年です。これは紛れもない事実で。今年を振り返るのに欠かせない要素であります。

 個人的なことを思い出すと、今年ほど、「保坂壮彦って何?」ということを問われる場面に出くわすことが大きかった年は無かったのかなって。11月に40歳の大台に乗ったというものあるかもしれないけれど。もう、既に、保坂壮彦の人生の半分を生きてしまったということ。生かされたということ。それを目の前にして、様々な景色が、様々な人達が、己に対して、「あなたは誰?」ということを突きつけて来たことが多かった気がします。ていうか、親父は59歳で死んでるんで、あと、19年経てば、もう、親父の天命を全うした年齢になっていまうという。ていうか、親父の人生の3/4ほど、消化してしまったという。そんなことも考えさせられました。

 震災で多くの方が亡くなられましたが、個人的に、元旦から親戚の叔父が亡くなったりして。近親者が今生を全うし、召されたということもあって、「生きる」「生かされる」ということも、例年以上に考えさせられることが多かったです。

 あとは、人、です。人。自分が日々、今日を刻んでいくに当たって、人、の大切さを感じた年でもあるかなと。例年以上にそういう思いが駆け巡っています。

 語ると長くなるので、ひっくるめて完結に言うと、やっぱり、12/14に『ALL IS LOVE IS ALL』というMIX CDをリリースさせて頂いたというのが自分の中では、大きかった。勝手ながら、自分の今までの人生があってこそのCDであると。それら全ての感情を詰め込んで制作したものなので、本当に、自分にとっては記念碑的作品であるとともに、先に述べたように、「保坂壮彦って何?」の回答を、一旦、この作品で出せることが出来たということが、何よりもでかいことだったのではないかなと。思うわけです。

 といいつつ、まだ今年が終わるまで、後、4日あります。今日から、CDJ11/12も始まりました。保坂壮彦的には、まだまだ年内中に、年明け早々にやるべきこと。DJで音を届けることが待っています。年末は、今回で9回目の出演。9回って簡単に書いたけど、改めて考えると、凄いことだね。なんか。凄いや、俺(笑)。たまには自画自賛させて下さい。決して天狗にはならない人間なんで(笑)。30日と31日深夜(てか元旦早朝)。2回の出演に思いの丈を全て注ぎ、みなさまに届けます。やれること色々考えてます。といっても、派手なパフォーマンスをやれるほど度胸もないので、音で勝負です。それと、多少映像の手も借ります。それで、9回目のCDJに挑みます。幕張で会える方、笑顔で、会いましょう!逝ってしまった大切な人達の為にも、ここやそこにいるあなたや僕は、音楽で、がむしゃらに、命を躍動させましょう!!

 「世の中は色々あるから、どうか元気で、お気をつけて」

 皆様にとって、来年も、今年と同じく、日々が光り輝きますように。

 2011年に体感したブルースを感情に刻み、2012年、より強く歩めますように。

 幸あれ!






2011/12/18

ちょっとした『ALL IS LOVE IS ALL』制作秘話的な、話。



 気がつけばもう今年もあと何日?…ていか「COUNTDOWN JAPAN 11/12』が開催されるまでもう10日を過ぎてるんだね。て、こ、と、は、あと2週間か…。光陰矢のごとし…。今年は、30日、31日に出演します。つっても、31日に至っては、元旦って言ったほうがいいよね。だって、深夜?明け方?AM3:40からAM5:00までだもんね。最後の最後のアストロ・アリーナ出演者ということになりますからね。ていうか、おじさん、大丈夫かな…。

 12/14にリリースされた『ALL IS LOVE IS ALL』。リリースされてから、周りの色んな人に様々な質問をされることが多いのですが、その中で、一番多いのは、『いつぐらいから制作作業をしていたんですか?』ってのが多いっす。『どんだけ大変でしたか?』とかとか。

 実質的に動き出したのは、8月初旬くらいからになるのでしょうか。いや、実を言うと、リリースのお話は以前から頂いていて。何事もなければ、もう少し世に出るタイミングが早くなっていたかも知れません。なぜこの時期になったのか…? 直接的、間接的、いろんな「的」を含めて、東日本大震災の影響があったから、この時期にリリースされることになったのが一因です。でも、それは、誰にも逆らえないことであった訳で。あの震災があって、僕が音楽で出来ることなんて、ほんのちっぽけなことなんだから、致し方ないと思っていたので。粛々と受け止めて、些細なことでもいいから、僕に出来る何かを探していました。
 そこで、今回、僕の作品にコメントを寄せてくれた、チャットモンチーのアッコちゃん。彼女の言葉にも書かれているように(こちら)、あのとき、僕は、DJとして、何が出来るか。出来ることは何か。を模索していたところで、「音楽を届ける」ということで、彼女とリンクし、近づいて、どれだけの人にどれだけのものを届けられるか。暗中模索の中、届け続けていました。結果はわかりません。でも、僕の出来ることはあったんだと。そう実感させてもらえたのは事実でした。それから、改めて、ビクターの方からリリースのお話しを頂き。8月から動き出したという感じです。感謝しきれないほどの喜びでした。

 よし。では、どんなMIX CDにするか?ということになるわけですが、例の、震災の件があったし。その時期に、僕に出来ることっていうことを再認識したわけなので、大枠としてのテーマというものは僕の中で出来上がっていました。それを象徴するのが、CDのタイトルになった、『ALL IS LOVE IS ALL』です。本来ならば、ロックDJのコンピには似つかわしくないタイトルですよね。でも僕が、個人サイトにこの名前を使い続けてきたこと。『保坂壮彦=ALL IS LOVE IS ALL』という世界観を、スタッフが尊重してくれて。というか、その名前で出すことに意味がある、というくらいでね。僕としては、もう、このタイトルがついただけで、やることは決まった、みたいなところはありました。僕が感じ続けたものを総ざらいし、今、そして、未来に向けて鳴らす音楽を、DJとして紡いでいくということ。それだけです。が。が。が。それだけです、というのに、かなり苦労しました。
 「愛」に正確な定義が無いように、「僕」にだって正確な定義が無いから。なので、とにかく、自分が保有している音楽を全て総ざらいして。数千曲に渡る楽曲から、洋楽を削除し、残った数千曲の中から、「今、鳴らすべき音は何か?」を試行錯誤し。一旦まとめて、約4-500曲くらい。そこから、さらに削ぎ落としの作業が続きました。そこからは苦渋の決断の日々。DJとして繋いでいくスキルを発揮出来る楽曲を選んだり、そんなことは関係無しに、今、届けたい楽曲を選んだりして、日々思案しながら、ようやく40曲ぐらいまで絞り込んだわけです。

 そこから、色んな壁を越えたり、ぶち当たったり、壁に無理矢理穴を開けてしまったり。知らぬまに、落とし穴に落ちてしまったり。それでも、あり得ない偶然やサプライズも降り注いで。意図していなかったことが偶然という必然の魔法で、ばしっと決まったり。何事も、全てが上手く行くとは思っていなかった。だから、色んなトラップにはまったり、ピンポイントで打ち込まれて凹んだりしたけれど、それを超える、人為的なスタッフの皆様の協力と、人為的な力以上の何かが手助けしてくれたりして作業は進んで行きました。

 僕の思い、感情というものの基軸は、既にタイトルで大決定していたけど、じゃあ、DJプレイとしてどう繋いで、紡いで行けばいいのか?と。これももう、何十回、何百回?自宅で、七転八倒しながら、作業を続けていました。

 「あれとこれを繋いでこうなるから、こうする」「いや、これがこうならば、あれはあっちのあれとリンクさせよう」「ビートはもう少し落とす。そうすれば、前の曲が弾ける」「ここの3曲は、アーティストが伝えんとしている思いとしての共通点が似通っているから絶対に切り離さない」とかとか…。とにかく、基本路線として、聴き手に不快感を与えるような繋ぎ方にして、リスナーの気持ちとアーティストの思いを損なってしまったら、絶対に意味が無いという。その考えは絶対に忘れずに挑んでました。さらに、既に色んなところで述べていますが、起承転結、この作品1枚を頭からずっと聴き続けて最後に至ってこそ全てがわかるというような内容にならないように、至極、繊細になっていました。あと一番重要視していたのは、アーティストの思いが込められた楽曲を、僕の身勝手な理由や独断で、短くカットし、ひたすら数多くの楽曲を詰め込むという作品にならないようにする、ということ。

 こんなそんな時期を通して、この作品が出来上がりました。

 なんか、伝え下手になっているような気がするんだけど、気のせい?じゃないよね?かなり、アバウトな文章になっているよね?でも、これで伝えきりたい。これで、伝わって欲しいんです。もうこれ以上言葉にするのは、音楽に対して、言葉の数々によって、カタチある思考でがんじがらめにして、聴く前に、情報過多にさせてしまいそうで。なので、もうこの辺で終わりにします。

 とかいいつつ、ほんと、書き始めると、僕って文章長いんだよね。

 すみませんね、みなさん。

 ここまで読んでくれた人は、素晴らしい!(笑)

 ということで、ちょっとした(じゃねぇぞ。長すぎだぞ的な)『ALL IS LOVE IS ALL』制作秘話的な、話でした。

 とさ。




2011/12/13

『ALL IS LOVE IS ALL』 セルフライナーノーツを書き終えて…。


 収録楽曲、全曲のセルフライナーノーツを連載方式で書き終えました。

 明日、とうとう『ALL IS LOVE IS ALL』が世に出ます。

 やっと『ALL IS LOVE IS ALL』の誕生日が来たんですね。

 早いところは、もう今日から店頭に並んでいるのでしょうか…。


 『ALL IS LOVE IS ALL』というこのアルバムは、「すべてが愛」「愛がすべて」という僕の造語にて名付けられたアルバムであります。改めてなんとも大仰なタイトルを付けたもんだなぁと、自ら思うけど、それは、保坂壮彦のオフィシャルサイトとして『ALL IS LOVE IS ALL』という名前を付けた時も、そう思ったことで…。実際、僕は、“愛とは何か?”と人に問われても、答えなんか出せません。だって、そんなことが解っていたら、こんなタイトルは付けるはずないですからね。当たり前のように、僕は、愛の全てを知らない。いや、少しは知っているのかもしれないが、それがどんなものなのか表現できない。ただ、愛というものがどれだけ大切な感情かということは、解る。どれだけ大きなものかということも解る。でも、それに対して言葉で伝える術を知らない。でも僕は、伝える術と、知る術を知っている。それが、音楽なのです。
 いろいろな表現者が様々なフォーマットで、人間の根源的なことを伝え続けて来ている。その中で、愛というものも、数え切れない人達が、数え切れない解釈で伝え続けてきている。その中で、僕は、音楽から愛を知った。別に、無理からに、説き伏せられた訳ではない。ただ音楽を通じて、愛というものの存在を初めて知ったのです。だからこそ、僕は、音楽を信じるし、愛を伝えてくれる音楽の魔法を信じ続けているのです。
 改めてこのような形で、全曲セルフライナーノーツを書いてみて、28曲、全部の曲に感化されて感情を揺さぶられた自分がいたことを再確認しました。そして、その思いを、『ALL IS LOVE IS ALL』というアルバムで、音楽で届ける前に、この場で言葉で伝えることが出来て良かったと思ってます。だけど、だけど、だけど、ね。言葉じゃないんだよね。音楽を説明するのに言葉は必要だけれども、不可欠ではない。音楽は音楽だから。それ以外の何物でも無いから。だから、この僕のセルフライナーノーツを読んでくれた人に感謝の意を届けつつも、とにかく、『ALL IS LOVE IS ALL』というアルバムに詰まった音楽を是非とも聴いてもらいたい。それがなければ始まらないから。
 聴いて下さい。聴いてくれれば、その時点から、僕のセルフライナーノーツは必要じゃなくなるのです。音楽は、リスナーのものです。作り手が産み出したものですが、届けられたリスナーが聴いて、そこから産まれる感情がその音楽の全てを決めるのです。敢えて、わがままを言わせてもらえれば、そこに何かしら、愛というものの欠片を感じてもらえれば僕は本望です。

 もうそれだけです。

 是非、聴いて下さい。

『ALL IS LOVE IS ALL』 セルフライナーノーツ 26〜28



- 26 回想する/ 木箱

 アルバムが終わりに近づくにつれて、タイトルが示す通り、「回想する」気分になる楽曲。昨今の音楽は、オーバー・ワークス、オーバー・プロデュースが多い楽曲が多い。そんな中、彼等の音楽は、音数が少ない。ということは、簡素なのか?チープなのか?と思うのだろうが、そんな簡略的な解釈では困る。音楽というのは、音が鳴っていない部分も含めて音楽なのだということを解って欲しい。その音の配置、並び、など。絶妙に構築されているからこそ、彼等の音楽はシンプルでありながらも奥深さを感じるのだ。故に、次なる楽曲への架け橋としてとても流麗に繋げることが可能に…。それも、ボーカルのブレスがポイントとなり、絶妙に繋げることが可能に…。


- 27 STROBOLIGHTS / スーパーカー

 僕がDJを、主に邦楽を主体とした選曲でDJをプレイし始めた頃からの、私的究極のアンセム。“愛”という言葉が幾重にも連なり続ける歌詞。『ALL IS LOVE IS ALL』というタイトルにぴたりと当てはまる、リリックなのです。主にシングルバージョンをスピンすることが多かった時期もあったけど、このアルバムバージョンの方が、時代と共にしっくり来ているのです。深遠さ、穏やかさ、流れるようなメロディーラインがシングルよりも優る。そして、このBPMは、ハウスのビート、BPM128に寄り添うような流れでもあり、邦楽に限らず、四つ打ちのトラックに絶妙に繋げることが可能なのです。さらに、後半に向けて、ボーカルが高音域に抜けて行き、終焉を打つように、ビートが名残惜しく刻み続けられるところが、素晴らしく。次なる最後の楽曲と繋げるに、とても絶妙な効果をもたらしてくれています。


- 28 アルクアラウンド / サカナクション

 最後にサカナクション。それも「アルクアラウンド」。意外に思われる人もいるかもしれないが、この楽曲を最後に繋ぎ込めたことで、『ALL IS LOVE IS ALL』というアルバムを、そのままリピートして聴いても、1曲目の「キャノンボール」になんの違和感もなく流れていくという。終わりなき螺旋状に響き渡る輪廻のようなアルバムにすることが可能になったのです。イントロをループさせて、「STROBOLIGHTS」のアウトロから繋ぎ込み、楽曲そのまま収録させて頂きました。
 この楽曲で歌われる決意というものを最後に持って来たのも、いや、結果的に持って来れたのも、このアルバムを象徴するかのような事実になった。“この地で (終わらせる)(今始まる)意味を探し求め また歩き始める”…。この歌詞に込められたものが、このアルバムの最後に届けることで、『ALL IS LOVE IS ALL』という作品には、始まりも終わりも無いということを証明することになった。
 故に、終わりにふさわしいと言えばふさわしい楽曲。でも、この曲から始まるアルバムと言えば、それにふさわしい楽曲であるのです。
(終わり)


2011/12/12

『ALL IS LOVE IS ALL』 セルフライナーノーツ 23〜25



- 23 orange sunshine distortion / The Flickers

 今回のアルバムを創るにあたって、“ニューカマーバンドを収録したい!”という思いがあった。まだ世間一般的に認知度が狭いけれど、今後必ず活躍飛躍して行くであろうバンドの音楽を伝えたいという思い。その思いの結果、彼等のこの楽曲を収録するに至ったのです。全ての楽曲に言えることになるけど、このアルバムで初めて出会った音楽をきっかけとして、そのアーティストのことをより深く知ってもらえれば、もうそれは、DJ保坂としての本望を遙か超えるほどの喜びなんです。
 彼等の音楽は、アンダーグランドミュージックで終わらない。ビート感や楽曲が醸し出すダークネスと、心地よいポップなメロディの融合。和製ニュー・オーダーとも言えるような、音楽性も最高のバンドなんです。


- 24 Electric Surfin’ Go Go / POLYSICS

 今となっては当たり前のようになった、ロッキング・オン主催のフェスでのハヤシ氏のDJプレイ。初めて体感したときの衝撃度は凄かった。最高に上がるし、笑えるし、踊れるし。ほんと、いつの間にか名付けられた、“DJという名の不法集会”は、もうフェスにはかかせないアクトになった。それがあるからこそ、あったからこそ、僕の中でのPOLYSCS愛が膨らんだと言っても過言ではない。
 そんな思いも込めて、僕が彼等の曲を自らのMIX CDに収録するならば…これだ!これしかない!と。他に選択肢はなかった。これしかなかった。理由は沢山あるが、僕にとってのPOLYSICSはこの楽曲なんですよ。


- 25 Delight Slight Lightspeed / avengers in sci-fi

 “ロックンロールはイントロの10秒〜15秒を聴くだけで、それが名曲か名曲じゃないかが解る”ということを、以前先輩から教わったことがある。それが全てとは言わないが、確かに僕もそう思うのだ。その楽曲が名曲であるのならば、“どこを切り取って聴いても素晴らしいと思えるはずだ”という暴論さえも僕は吐いてしまうほどの極端な人間でもあるのです。そんな観点から行くと、もう、彼等のこの楽曲はイントロ部分で昇天でしょう。昇天ということは、名曲なのですよ。昇竜拳!の如くのイントロダクションで、はい、決まり!です。
 そこからサビに向かっていき、力強く突き進みながら、ブレイクダウンしたところで、ビートを敢えて落とし込んで、次なる楽曲へバトンを渡すように…。

2011/12/11

『ALL IS LOVE IS ALL』 セルフライナーノーツ 19〜22



- 19 ミンガスファンクラブ / SOIL&"PIMP"SESSIONS

 僕も敬愛するジャズ界の、ハード・バップの異端児ベーシスト、チャールズ・ミンガスの名曲を、爆音ジャズで、奏でる様はまさに奇天烈極まりない。
 このアルバムは邦楽を詰め込んだロックDJ MIX CD。故に、邦楽以外のカテゴリーを入れ込むことは不可能だった。その壁をなんとか乗り越えたく、彼等のこの1分強しかないナンバーで、なんとかぶち破りたかったので収録しました。短いけど、濃密な歴史と思いが込められていると感じてもらえれば本望です。


- 20 オトナノススメ / 怒髪天

 デス・ジャズから一転し、鳴らされるは、怒髪天のナンバーだ。世間的に、もう、おじさんになってしまった僕にとって、おじさんとしての大先輩である彼等のストレートな人生賛歌は、染みすぎるほど染み渡るのです。ここ数年、おじさんだけではなく、年齢層を選ばず、様々なリスナーに支持を受けて、さらなるスピードと多岐に渡る活動を行っている姿は、もう、頭が上がりません。
 大人は最高!青春続行!などなど。若造から見れば、何言ってんだよ、的な。そんな思いを歌詞に込めて歌いあげる事が出来るのは怒髪天だからこそ。それだからこそ、励みになる。とても頼りになる大先輩っす。


- 21 アフターダーク / ASIAN KUNG-FU GENERATION

 振り返ると、90年代の日本のロックはとても自由度が広かった。欧米の音楽に感化されて、オリジナリティ溢れる音楽を開陳する才能溢れるバンドが多々いたのだ。しかし、00年代になり、Jロックという、見えない解らないカテゴリーが構築されて、日本のロックは平坦化され希釈されてしまった。しかし、それを正面から受けとめて、デビュー以来、日本のロックバンドとして進化と深化を突き詰めながら、10年代も突き進むであろう期待を背負う意志を強く持つバンドは彼等しかいない。
 そんな彼等の代表曲の中でも、この「アフターダーク」に込められた意志と決意は、何よりも強い。“進め”という一言に、あらゆる思いを託して、音楽の素晴らしさを伝えたく、セレクトさせてもらったのであります。


- 22 青い空 / くるり

 DJたるもの、自分の中で、“この曲とこの曲を繋ぐことは俺の中での十八番である”的なものがあるはずで、それは、僕の中にも多々ありまして。その中でも、「アフターダーク」とこの「青い空」を繋いでプレイする頻度は高い。
 僕の持論で、“BPM、ビートが近い楽曲同士は、その楽曲が示すテーマや世界観をも共有していることが多い”というのがある。楽曲が持つ歌詞の意味合いも含めて、ギターの音色やベースラインの流れなども含めて、だ。それがこの2曲。そうやって聴いてもらえると、今までに無い発見を見いだしてくれるかもしれない。そんな期待をこのMIX CDのあらゆる場面で、あらゆる角度で、詰め込んでいるんですよ。実は。この2曲の繋がりだけじゃなくてね。それを感じてもらえれば、本望であります。

2011/12/10

『ALL IS LOVE IS ALL』 セルフライナーノーツ 14〜18



- 14 Kill your idol / KING BROTHERS

 酸いも甘いも知り尽くした彼等が8年振りにメジャー復帰。その1発目に届けられた楽曲がこれ。インディーだろうが、メジャーだろうがそんなのどうでもいい世の中になってしまったが、当然の如く、メジャーシーンで放つ数々のロックロールの広がりは、インディーよりも広しなのは明らかだ。それを逆手にとって、いや、相も変わらず、「これこそがロックンロールだぜ!」という、証をより万人に突き刺すことを意図的だろうがなんだろうが、とにもかくにも強烈に放つっている。リスナーにロックンロールとはなんたるか?を説き伏せるかのように鳴らしまくっている、痛烈なトラックだ。
 ここから始まる、このアルバムのロックンロールモードの号砲として収録。


- 15 FOOL GROOVE / YOUR SONG IS GOOD × BEAT CRUSADERS

 ユアソンとのコラボではあるが、そのケミストリーが功を奏したかどうかはもうどうでもいいほどの、ビークル史上、1、2を争う、最高のロックンロールポップチューン。必ずといって良いほど、この楽曲を僕はDJでスピンし続けている。他にも沢山、伝え続けている楽曲はあるが、この楽曲のイントロから始まる全てのクオリティの高さが、僕にこの曲をスピンさせることになっているのだ。
 どんな状況であれ、イントロドン!で、すでにこの楽曲の世界に入り込める、強烈なナンバー。それをもっと強烈に打ち付けたく、「Kill your idol」で歌われるリリックの後に、ぶち込んだわけなのです。


- 16 For divers area / Dragon Ash

 ロックアンセムというものはこうあるべしと言ってしまってもいいくらいの、最強のミュージック。音楽を全身で、肉体的に体感し、思考を遠くに追いやって、ただひたすら浴びる。そして、踊る、叫ぶ、暴れる。音楽は自由だ。音楽が鳴っているその瞬間だけは、なんでも許される。そんな多幸感を存分に堪能出来るナンバー。
 前曲、「FOOL GROOVE」のグルーヴ感を損なうことなく、さらに強力な流れになるように繋ぎ込みました。


- 17 風吹けば恋 / チャットモンチー

 2011年に巻き起こった様々な哀しみを振り返って、僕らにとって今必要なのは、何かを思うこと。何かを祈ること。何か行動を起こすことだと思う。そのきっかけをこのアルバムで表現したく、この楽曲をセレクトしました。彼女達が伝えるメッセージ。「行け!」というフレーズ。この一言がこのアルバムを創り上げるのに必要不可欠であったのです。さらに、どうあれなんであれ、人は人。私は私。というリリックの秀逸さを改めて握り締めて欲しいのです。
 千差万別。色んなことがあった2011年だけど、絶対に失ってはけない自分というもの。そして、とにかく歩みを進めること。それを、今、改めて実感してもらいんです。この「風吹けば恋」で。


- 18 ジェットにんぢん 2010 / GO!GO!7188

 デビューから10年を超えるキャリアを積み重ねてきた彼等だが、この楽曲が当時リリースされた時の衝撃は未だに忘れられない。当時、僕が某CDショップの店員で働いていた時に彼等がインストアライブを行った。その時、ロック&ポップス売り場を徘徊しては、目を爛々と輝かせ、色んなCDを聴き漁って、興味を示していたあの頃の姿。音楽をひたすらに吸収しようとしていた姿。改めて、2010年の配信限定リリースバージョンで聴いても、あの時の輝きが全く失われていないことに、感動。そんな僕の個人史もこのアルバムにはちらほらと、入れ込んでいるのであります。

2011/12/09

『ALL IS LOVE IS ALL』 セルフライナーノーツ 10〜13




- 10 これはもう青春じゃないか / THEラブ人間

  「観覧車〜」から一気にビートダウン。楽曲の構造が違えども、ラブソングという繋がりとして、リンクするトラック。いつの時代も希薄、軽薄なラブソングが売れるという、普遍的なポップミュージック市場において、羞恥心なんか二の次に、外連味のない、究極的、個人的恋愛風景を開陳する彼等の姿勢は素晴らしき。
 ブレイクの時点でリフレインされる、「これはもう青春じゃないか」という部分をテンポアップさせて、次なる曲へ誘なってみました。

- 11 YOU&I / 竹内電気

 タイトルが示す言葉がもうそのままである。君と僕が織りなすストーリーだ。このMIX CDを作成するにあたって、様々なリスナーに届けるという視点を持ちながらも、個:保坂壮彦と、個:あなた、へ、届けたいという気持ちも忘れずに伝えたいという思いを込めて、選曲させてもらいました。

- 12 It's so GOOD / アシガルユース

 人を見た目で判断するのはいけない!ということを逆手にとって、僕らは見た目で勝負だ!と表現しつつも、彼等が歌うメロディーはその見た目が邪魔になるほどのグッドミュージックなのであるという、堂々巡りの矛盾。この矛盾が最高なバンドの、最強のポップチューン。
 前曲の竹内電機とも様々な場所でライブを重ねているからこそであろうか。そこで何かしらのシンパシーを互いに分かち合っているからだろうか。この2曲はとっても穏やかに、柔らかに、繋げることが出来たのです。

- 13 光のたてがみ (Album ver.)/ SEBASTIAN X

 このMIX CDを創るにあたって、音楽を聴くこととは?音楽を奏でるとは?音楽とは何か?というものを、音楽で届けることを可能にするのに、絶対的に欠かせなかった楽曲。その本質に真摯に向かって鳴らすことを可能にした楽曲である。
 目に見えない感情や心を届けようとすること。カタチあるものに縛り付けられずに、音楽で解放される素晴らしさとはこういうことなんだよ!ということを、穏やかに、煌びやかに、光をテーマに表現した、最高のポップミュージックである。
(続く…)


2011/12/08

『ALL IS LOVE IS ALL』 セルフライナーノーツ 06〜09



- 06 I Hate DISCOOOOOOO!!! / the telephones

 「やっぱ音楽は素晴らしい」のブリッジ。そのドラムフィルから突然、どすんとビートが落ちて、の、このトラック。しかし、言わずもがな、イントロが終われば、もうそこには彼等の専売特許とも言える、高速ビートの、ハイパーチューンが流れ出す。「Hate」という言葉が素晴らしい。好きも嫌いも表裏一体なのだから。そんな対なる感情さえも、愛というものは包み込み、僕らを混乱させて、興奮させるものだから。
 感情は言葉だけで揺るがされるものではない。ただひたすらに音楽に身を委ね、踊り明かしてこそ、全身に響き渡ることも必要だということを彼等は、常に聴き手に突き出すアーティストである。

- 07 半径30cmの中を知らない / アルカラ

 イントロ一発の衝撃度がやばい。the telephonesの昇竜するギターからの繋がりの衝撃度が強いトラック。音圧の高さ。L→R、R←Lに振られるギター音が鳴り響いた後のメロディラインと声色の透明度も、新人バンド離れした形相を魅せている。ブレイクに入って、テンポダウンして。どこで次なる楽曲にどう繋げ行くか。かなり試行錯誤したが、奇跡的なドラムフィルの複雑怪奇な繋ぎが可能になって、名曲へなだれ込む…。

- 08 VIBES BY VIBES / 10-FEET

 斉藤和義の楽曲もそうだが、どうあがいても逃れられない、2011年の出来事。「3.11」。それを体感した僕らは、何をすればいいのか。何が出来るのか。様々な場面で考えさせられることが多々あった。今の今でもそうだし、これから何年もずっとそのことは考えさせられ続けなければならない。
 そんな時に、心を鷲掴みにされる楽曲というものは、聴き手をアップリフトさせつづけ、生と死の喜びと悲しみを、一貫して伝え続けて来たアーティストなのである。それが、10-FEETであり、このトラックであり、彼らの存在意義なのだと改めて納得させられるのだ。

- 09 観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは / The Mirraz

 高速ビート。高速リリック。ひたすら世間に唾を吐きまくり、猪突猛進で走り続けてきた彼等が、ロックンロールの根本を見つめ直し、辿り着いた、ラブソング。そう、ロックンロールとはラブソングなのだということ。これは、世の中がどうあれこうあれ、僕と君の間に巻き起こる様々な感情が交錯することが、結果的に、世界を揺るがす視点をもたらすということ。世界を揺るがす音楽になるということの証明だ。
 孤独だ。なんて孤独なんだ。そんな哀しみが溢れた2011年に敢えて、軽快なロックンロールを鳴らす決意をした彼等の、ネクストステージに向けた、最高のラブソングである。
(続く…)


2011/12/07

『ALL IS LOVE IS ALL』 セルフライナーノーツ 04〜05



- 04 JUST BE COOL / THE BAWDIES

 「虹」のシャッフルビートに続けとばかりに、BPMをかなり上げてグッド・ヴァイブレイション・ロックンロールを…。
 彼等は、デビュー時の衝撃と勢いに乗っかって、初期衝動と欧米のソウルミュージックの模倣だけで突き進むのではなく、メロディという武器を得て、更なる飛躍を遂げている。それは、普遍的な邦楽のポップミュージックにも通用するナンバーをここ最近ドロップしてきているということだ。そんな中、単なる激しいトラックではなく、あらゆる音楽にバトンを渡せるような、それでいて、彼等でしか鳴らせないロックンロールを、セレクトさせて頂きました。

- 05 やっぱ音楽は素晴らしい feat. RHYMESTER / SCOOBIE DO

 THE BAWDIESのシャッフルビートと絡みつくように、RHYMESTERのリリックとSCOOBIE DOのファンキーブレイクビーツのコラボレーションが秀逸なトラックをドッキング。楽曲のグルーヴ感もさることながら、タイトルが表しているように、この歌のメッセージは、とっても、キテる。すげぇ、キレている。「音楽とは何か?」というものを、真摯な言葉で伝え、軽快なトラックで奏でている。是非とも耳を澄まして聴いて欲しい。是非とも身体を揺らして感じて欲しい。そうすれば伝わる。これこそが、ファンクミュージックの王道であることが。

2011/12/06

『ALL IS LOVE IS ALL』 セルフライナーノーツ 01〜03



- 01 キャノンボール / 中村一義

 アルバムタイトル、いや、このブログのタイトルや保坂のオフィシャルサイトの名称である『ALL IS LOVE IS ALL』を表するにあたって、絶対的に欠かせない楽曲。「愛」という普遍的かつ壮大なテーマを題材にすること。それは人間に巻き起こる全ての感情をを背負う宣言でもある。“そこで愛が待つ故に”と繰り返されるリフレインに、呼応するように、“僕は行く”“立ち止まる”“僕は往く”と紡がれる歌詞。
 今回の作品を作るにあたって、この楽曲がなければ、何もかもが始まらなかった。それも1曲目に鳴り響かなければ意味が無かった…。そんな思いが詰め込まれたトラックです。

- 02 MUSIC BY. / Riddim Saunter
 「キャノンボール」にディレイをかけて、始まる、音楽の、ミュージックの、Music。ようは、音楽というものの号砲となるトラック。惜しくも解散してしまったアーティストではあるが、音楽は決して消え去らない。DJたるものに課せられた使命は、残された名曲達を伝え続けるということ。それを背負って、鳴らすことだ。
 ダンスミュージックとして、オーディエンスを鼓舞するハンドクラップと、絶妙なメロディとビートに乗っかった英語詞の秀逸さは、彼等にしか成し得なかった。

- 03 虹. / 斉藤和義
 「Music By.」終わりにエフェクトをかけて、彼が弾き語る、ギターの弦、6本全てが力強く鳴り響くイントロを繋げた。
 ほぼ全ての楽器を演奏する彼ならではの揺らぐグルーヴ感が最高なトラック。2011年。「3.11」。その事実に真っ向から反旗を振るった彼のアーティストとしての立ち位置は、今に始まったことではない。この楽曲に込められたテーマだって、痺れるくらい、今に響き渡る。
(続く…)


「COUNTDOWN JAPAN 11/12」 出演タイムテーブル決定!!








 

★DJ保坂壮彦 MIX CD リリース決定 !!&収録楽曲大発表!!


2011/12/05

MIX CD『ALL IS LOVE IS ALL』発売に向けて。






 師走に入って、急激に寒くなってきた。


 自身の作品が世に出るまで後10日。


 DJ保坂壮彦として初めてとなる作品、『ALL IS LOVE IS ALL』について、初めて、自分の言葉で、このブログで語ろうと思います。


 どこから何を語れば良いのか。


 そんな思いを駆け巡らせていたら、ふと、過去の自分に辿り着いてしまったのです。


 今、改めて思うことがある。




 学生時代に愛用していたダブルデッキのカセットレコーダーを駆使して、お気に入りの曲をダビングして、繋いで繋いで、「マイテープ」を友達に渡していたころのあの喜び。
大学卒業後に就職した、アパレル小売店の店内BGM用に、お気に入りの曲をカセットテープに詰め込んで、集客のピークの時間帯に、「マイテープ」をガンガンかけまくって接客しながら、「今かかっているこの曲って誰の曲ですか?」と聞かれた時の、あの喜び。
CDJが世に出て、CDでもDJプレイが出来るという世の中になったときに、誰に向けるでもなく、家に籠もってひたすらDJプレイを楽しみ、今まで出来なかったこと、「曲を上手く繋げることが出来る!」という喜びを噛み締めたあの喜び。それから、アマチュアバンドを辞めてしまい、CDJでプレイすること、自分のセレクトをリアルタイムに伝えたい衝動に駆られて、家から外に出るようになり、友達だけの貸し切りでイベントを初めてやった時のあの喜び。


 その後、ライブハウスや、様々なクラブイベントにも出るようになった。そして、ジャパンフェスのような、想像を絶する大きなフェスの会場でもDJをやらせて頂けるようになって、気づいたら、学生時代から今に至るまで、あらゆる「喜び」が積み重なって、「DJ」と呼べるようなことをずっとやってきたのかもしれない。


 そして、今回、自らの造語であり、かつ、自らの個人的なサイト名である、『ALL IS LOVE IS ALL』という言葉がそのままタイトルになって、CDというフォーマットでリリースされることになった。月日の流れはとてつもなく濃密かつ長い。しかし、ほんの数行で振り返るととてつもなく速くも感じる。今回の作品には、こんな感じでさらっと語った保坂壮彦の全ての歴史が詰て込まれていると言っても過言じゃないと思う。故に、とてつもなく内省的かつ個人的な趣向もあるだろう。でも、とんでもなく普遍的かつ大衆に向けた作品にもなっている自負があります。


 ただ、好きな楽曲を、立て続けに連打して、自由奔放に繋ぎ合わせた、MIX CD。そのようなものにはしたくなかった。さらに、才能溢れる素晴らしきアーティストが創り出した楽曲を拝借して、自分名義の作品にすることによって、「俺のモノだぜ、これは!」というような作品には絶対にしたくなかった。さらに、音楽を愛するリスナーの、聴き手の自由度を束縛するような作品にしないように、トータルコンセプトアルバムのように、1曲目からずっと聴き続けてこそという、そいういう起承転結がくっきりとした作品にはなっていないと思います。


 全28曲。70分を超える作品。どのように聴いてもらっても構いません。 自分で言うのもなんですが、聴き返す度に、沢山の収録楽曲が、聴く時々によって、様々な表情を変えて見せてくれる。一度たりとも同じ感情にはならないのです。なので、普通に頭っから聴いてもらっても構わないし、好きなアーティストの楽曲からプレイボタンを押してもいいんです。この作品の全ての始まりは、あなたに決めてもらいたいのです。終わりもあなたに決めてもらいたいのです。


 それこそ聴くスタイルもなんだっていいんです。部屋だろうが、電車だろうが、車だろうが、歩きながらだろうが、踊りながらだろうがね。でもね、ただひとつ伝えたいことがあります。最終楽曲の「アルクアラウンド」が終わった後に、そのまま1曲目の「キャノンボール」を聴き始めても違和感がないように意図を込めて制作しました。敢えて僕のエゴを上げるならば、そこだけなのかもしれません。言うなれば、“終わりなき螺旋状のようなアルバム”であり、“聴き返す度にアルバムから伝わる感情が移り変わるようなアルバム”であると思います。


 長くなりましたが、後10日間。


 時間の許す限り、このアルバムに収録された楽曲全てにおける僕の思いの丈を、このブログで綴っていこうと思っています。


 後10日間。


 全てのアーティストとリスナーへ。それを産み出す音楽という魔法へ。尊敬と感謝の意を捧げたいと思います。