2012/07/05

中村一義『対音楽』ディスクレビュー。


中村一義『対音楽』
2012年7月11日(水)発売
【CD+DVD】VFCV-00096/B 3,800円(税込)
【CD】VFCV-00097 3,150円(税込)
※DVD付初回盤スリーブ仕様
※DVDには本人制作&語り下ろしによる各楽曲解説とMUSIC VIDEO 「運命」を収録
※シングル・アルバム連動特典あり
※アルバム購入者対象ライブチケット先行予約あり


<作品詳細>
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 デビュー15周年!約10年ぶりとなる中村一義・ソロ名義となる超弩級のニューアルバムが7/11(水)、ついにリリース!

 1997年、シングル「犬と猫/ここにいる」で鮮烈なデビューを果たした中村一義。

 デビュー15周年を迎えた今年7月、『中村一義×ベートーベン』という前代未聞のコンセプトのもと、作詞作曲、アレンジ、演奏、プロデュースに至るまで、その全てをたった独りで担い創り上げた超弩級のニューアルバムがいよいよ発売決定!

 シビアな視点から混沌とする現代を見つめた鋭い歌詞の世界観と、中村のバックグラウンドにある豊潤な音楽性から紡ぎ出された多彩な収録楽曲には、自身のルーツともいえるベートーベンの交響曲第1番から第9番までの印象的なフレーズが曲順に沿って取り入られており、まさに中村一義という唯一無二のアーティストが創り上げる音世界と直接対峙するマスターピースといえよう。

 約10年振りとなる待望のニューアルバム、

 中村一義の新たなる金字塔が今ここに鳴り響く!

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<ディスクレビュー>


 中村一義にとって、ベートーベンは、音楽の師であり、ある意味それ以上の存在であり。当たり前のように音楽としてベートーベンを聴くことはあっても、ベートーベンの音楽に触れて、自らの音楽を創るにあたって、『中村一義×ベートーベン』などという行為をするようなことは考えも付かなかったはずだ。
 しかし、彼は、果敢にもこの作品にてそれにチャレンジする決意をした。それは、このアルバムタイトルが示す通り、『対音楽』という、彼が新たな音楽を産み出すために、彼なりに音楽に真摯に対峙するためには避けられない道であったからだ。いや、避けられないという言い方はちょっとニュアンスが違うかもしれない。いつか挑まなければならないという想いが、彼の心の奥底にずっとあったのかもしれない。


 その想いを実現させたのは、その背中を押したものは、彼のお祖父さんである、故:中村二郎氏であろう。先行シングル『運命/ウソを暴け!』からの、中村一義のアーティスト写真やジャケットに常に映り込んでいる白いマスク。これは、彼のお祖父さんのライフマスクである。
 中村一義にとって、中村一義が中村一義という人間を形成し音楽を産み出すことをライフワークにするにあたって、偉大なる師であった、ベートーベンと中村二郎という彼等への敬意と想いを込めてこそ、音楽に対峙する作品を創り上げるんだということの現れだ。
 それも、100sというパーマネントではないバンドで作品を創るのでは無く、中村一義という人間独りで落とし前をつけなければ意味が無い、という。だからこその、久しぶりのソロ作品と相成ったのだろう。


 こうやって言葉を綴ると、この『対音楽』という作品は、中村一義の極私的な作品なのかも知れないと思う人もいるだろう。それは正解であり、間違いでもある。極私的な作品とは、決して誰もが共感出来ないものであるという意味では無い。
 人というものは、僕を知るためにあなたを必要とする。あなたがいなければ僕を知ることが出来ない。故に誰もが自分の感じたことを、音楽に託し、世に放つ。それが私小説的であろうがファンタジーであろうが、ひとりのアーティストから産み出されたものは全てが極私的な作品なのだ。
 いや、そうでないものもあるだろう。何の魂も込めずに、音楽を大量生産するアーティストもいるからして。それはもうもはや、音楽ではないと言ってしまおう。自身の想いで言葉でメロディーでリズムで…と、誠心誠意、魂を込めた作品でなければ、それは音楽と呼んではいけないとまで言い切りたいのだ。


 だから、中村一義の最高傑作は、ファーストアルバムの『金字塔』であると言う人が多い意味も解る。彼がメジャーデビューまでに歩んだ個人史を総括し、それを普遍化させた作品が『金字塔』だからだ。そして、そこから15年…。今ここに生まれ落ちた『対音楽』という作品…。
 これは、その『金字塔』さえも飲み込み、それ以降の彼の個人史を全て包括したものである。こう表現してみると、この作品に秘められた、とてつもないポテンシャルを伝えることが出来るだろうか。伝わって欲しい。いや、伝えたい。


 今回の作品において、特徴的なものは、全楽曲におけるメロディーのポップさがある。ポップなメロディーの強度が凄い。さらに、歌詞においても、シンプルさが目立つ。難解な語彙を駆使する手法の対極を行くかのような、とても根源的かつ普遍的かつ真理を突く言葉が綴られている。
 あとは、ベートーベンの魂が後押しをするように、弦楽器の響きを中心としたクラシカルな音が顕著に表れ、ベートーベンの交響曲そのまま、9曲で終わる(ボーナストラックを除く)というアルバムのシンプルさが、彼の今までの作品の中では無かったところだ……。



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 実は、今回は、ここで、作品のレビューを終わりにさせていただきます。。。


 今回、この、『対音楽』という作品をもっと奥深く掘り下げて行きたいと思っており。アルバム全曲解説という形で、近々、改めて、書き記し、公開することを決めました。そちらの方では、もっと、音が伝わるように。もっと、この作品の素晴らしさが伝わるように。ありったけの力を込めて届けようと思っています。


 是非、期待していて下さい。

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